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「給与を上げれば採れる」——米国で人材を失い続ける日系企業の盲点

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読んで欲しい人: 米国に拠点を持つ、または持とうとしている経営層・CFO・人事担当

在米日系企業の67.5%が「賃金上昇」を経営課題トップに挙げている。
だが給与を上げても人が来ない、定着しない企業が増えている。
問題は「いくら払うか」ではなく「どう設計するか」だ。

01|数字が示す現実:日系企業の採用は危機的状況にある

ジェトロが2025年度に在米日系企業1,871社を対象に実施した調査結果は、衝撃的な内容だった。

67.5% が「従業員の賃金上昇」を筆頭経営課題に挙げた

51.4% が「従業員(一般社員)の確保」を課題と回答

40.2% が「従業員の定着率」を課題と回答

39.4% が「従業員(技術者)の確保」を課題と回答

さらに深刻なのは「状況の変化」だ。人材確保状況が「悪化した」と回答した企業は27.0%。「改善した」企業の10.7%の2.5倍超だ。改善している会社と悪化し続けている会社——この差は何から生まれているのか。

キーメッセージ:問題の量より問題の構造を見よ

多くの日系企業が共通して犯している誤りは「給与を上げれば採れる」という思い込みだ。シリコンバレーのエンジニア平均年収は$125,306(約1,378万円)。日本の30代エンジニア平均511万円と比べると約3倍。この差を埋めようとすれば事業採算は壊滅する。「価格競争をやめる」ことが戦略の第一歩だ。

02|反直感の発見:給与を上げた会社が、もっと早く離職された

「もう少し給与を上げれば採れるはずだ」——この判断で動いた企業の末路がある。

中西部に拠点を持つある日系製造業は、2022年から2024年にかけてエンジニア年収を20%引き上げた。結果は? 離職率は変わらなかった。

退職者10名へのヒアリングで出てきた本音は以下の3つだった。

「改善提案を出しても、日本本社の承認まで6ヶ月かかる」

「いつマネージャーになれるのか、基準が全く分からない」

「責任の範囲が曖昧で、何も自分で決められない」

アメリカ人が仕事に求めるのは「意義」と「達成感」だ。給与を上げても、意思決定権限がなければ「お金をもらいつつ何もできない場所」にしか映らない。

キーメッセージ:アメリカ人の転職回数は平均11回(日本は2回)

これはデータが示す文化の違いだ(日経新聞、2024年)。アメリカ人は「成長できない環境」にいることを、積極的に「変える」。給与が市場水準に達していても、成長実感がなければ次を探す。これは「忠誠心の問題」ではなく「市場の構造」だ。

03|問題の解剖:なぜ日系企業は採れないのか

【壁①】採用スピードの致命的な遅さ

優秀なアメリカ人候補者は、複数のオファーを同時に比較し、72時間以内に決断する。日系企業の最終オファーまでの平均リードタイムは4〜8週間。その間に候補者は他社に行く。

SHRM(米国人事管理協会)の2025年調査によれば、1採用あたりコストは非管理職で平均$5,475、管理職では$35,879。空きポジションは月$4,000〜$9,000の損失を生む。「慎重に時間をかけて採用する」コストは、見えないところで積み上がり続ける。

【壁②】稟議文化による権限の空洞化

日系企業に入社したアメリカ人が最も多く挙げる退職理由——「何も自分で決められない」。

日本本社への稟議が必要な構造、承認に数週間かかるフロー、責任範囲が曖昧で行動できない状況。アメリカ人は「仕事の成果を自分のものにしたい」という強い動機を持っている。それを組織構造が阻む。

【壁③】雇用ブランドの欠如

「御社ってどんな会社ですか?」——候補者がGlassdoorを調べると、何もない。採用ページには「グローバルに活躍できる環境」の一文。しかしアメリカ人目線では「日本本社の決定を待つだけのオフィス」に映る。

Google・Amazonに対して給与で勝てないのは分かっている。しかし「なぜあなたの会社で働くべきか」の理由すら語れていない企業が多い。

【壁④】バイリンガル人材の構造的枯渇

在米日本人数は長期的に減少している。日英バイリンガルで実務経験を持つ人材のプールは年々縮小中だ。専門家は警告する——「今後5〜10年で、アメリカの日英バイリンガル採用はヨーロッパ並みに困難化する」(iiicareer.com、2025年11月)。

加えて2025年9月から、H-1Bビザの新規申請に$100,000の追加手数料が課された。年10名の駐在員を送り込んでいた企業は、これだけで$1,000,000(約1.5億円)のコスト増だ。「日本から送り込む」戦略の採算は急速に悪化している。

04|改善vs悪化:何が結果を分けているのか

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結果として、改善している企業の定着率は悪化している企業より20〜30ポイント高い。採用コストは40〜50%低い。これは感覚論ではなく、設計の差だ。

05|3つの具体的アクション:今週から着手できること

アクション1:退職者データを整理する(今週中)

過去2年間の退職者リストを作る。退職理由を「給与・キャリア・文化・マネジメント・他社オファー」に分類する。最も多い理由は何か。これが問題の核心だ。

退職時のインタビューを実施していない場合は、今からでも退職した元社員に連絡を取る。「率直な意見を聞きたい」という姿勢で連絡すると、驚くほど正直に話してくれることが多い。

アクション2:採用リードタイムを計測する(今月中)

直近10件の採用について、「求人公開から最終オファーまで」の日数を計測する。3週間を超えているポジションが複数あれば、採用フローの改善が急務だ。

具体的な改善策として、「現地のHR担当者が日本本社の事前了承なしにオファーを出せる給与上限」を設定することが最も即効性が高い。例えば「年収$120,000以下は現地判断可」という設定だけで、承認フローが大幅に短縮される。

アクション3:1つのポジションのJDを書き直す(来月中)

採用中の最重要ポジション1つを選んで、JDを全面改訂する。以下の要素が揃っているか確認する。

業務範囲の明記(「その他業務」を可能な限り排除)

成功指標(KPI)の明記(6ヶ月後・1年後に何を達成すべきか)

意思決定権限の範囲(何を自分で決定できるか)

レポートライン(誰に報告し、誰と協働するか)

給与レンジ(市場データに基づいた具体的な数字)

このJD改訂だけで、応募の質が変わる。「ちゃんとした会社だ」という第一印象が候補者に伝わるからだ。

06|「給与以外の価値」を言語化する——日系企業の隠れた強みを活かす

日系企業には、米国企業が持っていない採用優位性がある。それを言語化できていないだけだ。

日本市場へのアクセスという希少価値。日本は世界第3位の経済大国で、1億2,500万人の市場と独自の消費文化を持つ。「日系企業での経験を持つ人材」は、グローバル採用市場で希少性が高い。これをキャリア資産として候補者に提示できている企業は少ない。

安定雇用という逆張り価値。Meta・Google・Amazonが大規模レイオフを繰り返した2022〜2025年。35歳以上・家族持ちの人材には「安定した雇用環境」が刺さる訴求ポイントになる。スタートアップのリスクを嫌う層は一定数存在する。

アジア市場全体へのゲートウェイ。日本本社を持つ企業は、日本を起点にアジア全域のネットワークを持つ。「アジア市場を本格的に経験したい」という野心的な候補者に対して、これは強力な差別化要因になる。

これらを採用サイト・求人票・面接で積極的に語ること。それだけで採用の競争軸が変わる。

07|まとめ:採用難は「給与問題」ではなく「設計問題」

米国での採用難の本質は、価格競争ではなく設計の問題だ。

✅ 採用プロセスのスピードを「3週間以内」に圧縮する
✅ 現地の意思決定権限を明確に委譲する
✅ 給与を市場データに連動させ、透明化する
✅ 独自の採用価値命題(EVP)を言語化する
✅ 退職者データを収集し、問題の核心を特定する

これら5つの設計変更は、いずれも「お金をかけずにできる」か「投資対効果が明確なもの」だ。

採用改革の初期投資が$50,000だとしても、定着率が15ポイント改善すれば年間$130,000超のコスト削減が見込める(年間採用数8名・50名規模の企業試算)。ROI 2.6倍の投資だ。

「採れない」のではなく、「採れる設計になっていない」——この認識の転換が、すべての出発点になる。

米国の人事・採用について専門家に相談したい方は、ぜひ専門の支援機関への無料診断をご活用ください。

Cross-Border Specialists |HGMI
Horizon Global Management & Integration(HGMI)は、日本企業の米国進出・
www.horizongmi.com

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元記事(Note.com): https://note.com/masa_us_biz/n/nc4df5b87a921

世界有数のビジネス・金融拠点、ニューヨークでの事業展開を。HGMIは実務に精通したコンサルティングファームとして、米国進出企業の「COO型パートナー」となり、スタートアップ支援、バックオフィス機能の一体運用、M&A・PMI、事業再建に至るまで、一貫して現場実行レベルで支援します。 日本企業の米国進出を、実務経験豊富な専門家チームが支援。

  • 登録日 : 2026/08/04
  • 掲載日 : 2026/08/04
  • 変更日 : 2026/08/04
  • 総閲覧数 : 128人
Web Access No.3771605
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