海を渡ったサムライママ、香純恭の殺陣師な日々。

ニューヨークを拠点に、殺陣とアクションの道場を開設している、殺陣波濤流NY代表の香純恭が、殺陣とアクションやエンターテイメント、アメリカの教育等、殺陣師そして3児の母の視点から持論を展開していきます。

2019年 8月 22日更新

第4回 : ニューヨークで活躍する俳優に聞く ~NY俳優生活~

皆様、こんにちは。
“NYのサムライママ”こと、香純 恭(かすみ きょう)です。

ニューヨークでは、そろそろ貴重な夏が終わろうとしています。本格的な秋を前に、もっと楽しまなくてはもったいないですね(笑)。

さて、私の道場には、各業界で活躍されている俳優さんたちがたくさん稽古に来てくれていますが、皆さんからニューヨークでの俳優事情を聞くたびに、そのがんばりに心から尊敬の念を抱いています。そこで、ニューヨークで活躍する日本人俳優やスタントマンを、ぜひ皆様に知って頂きたいと思い、本コラムから何回かにわたってご紹介していきたいと思います。

今回は、ニューヨークで着実に実績を残し活躍されている俳優の本田真穂さんにインタビューしました。

真穂さんは、私の道場の1期生でもあり、私がアメリカで初めて製作した映画「ファーストサムライ・イン・ニューヨーク(First Samurai in New York)」の主演を務めた実力派女優です。インタビュー中も、常に謙虚でゆっくりお話される真穂さんですが、一方で非常にストイックで、自分を俳優として高める努力を緩めることなく、そこが彼女の意志の強さや地に足がついた落ち着きぶりを醸し出しています。

オーディションにかける準備力
Q:真穂さんは、1日に何本もオーディションを受けるというよりは、1本に狙いを定めて、ものすごい準備をして挑んでますよね?

真穂さん(以下敬称略):はい、取りたい役のオーディションというのはいくつも来てくれるわけではないので。準備として、私はまず時間をかけて原作や台本を調べるようにしています。当たり前のことですが、台本に全てが詰まっていると思うからです。

Q:最終オーディションまで残り、最後は審査員が大絶賛だったのに役が取れなかったということもあるそうですね。

真穂:オーディション会場では、審査員から何の反応も無いのが普通なんです。だから、なぜ最終的にダメだったかというところまでは教えてくれません。例え、自分がどんなに手ごたえを感じることがあってもです。でも、結果はどうあれ、更に自分を高めていくために、普段から技術や感性を磨き続けることを惜しまず努力するようにしています。やっぱり、役者も技師さんのようにテクニック(技術)は必要です。決して自己解決しないで、信頼できる人からフィードバックをもらうことが大切だと思います。自信はあった方が良いけれど、自分はできると思える心は、普段の練習からしか生まれません。常に自分の技術に対して批判的にいたいと思っています。だからエゴはない方がよいんですけど難しいですね(笑)」

本場オフ・ブロードウェイでの整った仕事環境

昨年、真穂さんは、岡田利規氏作、ザ・プレイ・カンパニー(The Play Company, The PlayCo)プロデュースのオフ・ブロードウェイ舞台「部屋に流れる時間の旅」(Time's Journey Through a Room)で、数ある審査を通過し、本場のオフ・ブロードウェイプロダクションにデビューします。オフ・ブロードウェイプロダクションとは、舞台俳優や舞台監督などの組合である  (米国俳優協会:アクターズ・エクイティー・アソシエーション/AEA:Actor's Equity Association) の契約のうちのオフ・ブロードウェイ契約(Off-Broadway Contract)が適用される舞台で、組合俳優の出演料、1日のリハーサルや休憩の時間・回数、公演期間などに厳密な規定があるものを言います。しかしながら、組合の契約が適用されず前述の規定がない舞台でも、オフ・ブロードウェイとだけ呼ばれることもあるようです。(本田真穂HuffPost JP記事より抜粋

Q:本場オフ・ブロードウェイプロダクションは、どうでしたか?

真穂:まず、役者が演技に集中できる環境が整っていることに感謝しました。楽屋にはベッドがあり、役者の休憩時間が守られていたり、ユニオンサイドに状況をレポートするシステムが整っていました。プロダクション側は、誰がユニオンに報告するか知らされません。1カ月公演は体力勝負でしたが、それぞれがプロフェッショナルなので、素晴らしい環境で乗り切ることができました。

PlayCo's Time's Journey Through a Room. Pictured (L to R): Yuki Kawahisa, Kensaku Shinohara, Maho Honda. Photo: Julieta Cervantes
ニューヨーク・タイムズの紙面半分を使って掲載された記事。舞台は高い評価を得て大成功に終わりました。
初のアクション映画主演

最後に、真穂さんは映画「ファースト・サムライ・イン・ニューヨーク」についてお伺いしました。

Q:初めてのアクション映画の撮影はどうでしたか?

真穂:めちゃめちゃ楽しかったです!リハで練習していた自分の殺陣シーンが、カット割り、アングル、手順の工夫などでデコレートされていくのを実感しました。また、今回カットつながりを気にして殺陣ができたことは本当に大きかったです。反対に、いつもできることが現場でできなかった悔しさもあります。

インタビューを終えて

映画「ファースト・サムライ・イン・ニューヨーク」の殺陣のシーンの撮影日はなんと雪。夜の屋外での撮影に加え、衣装が着物だけなので、カットごとに、手がかじかんで刀が持てなくならないように手袋を渡したことを思い出します。映像で使われる殺陣は、技術はもちろんのこと、俳優がカメラアングルを分かっていないと撮影が滞ります。ですから、もし自分が今どう映っているのか、監督は今どんな絵が欲しいのか、分かって動いていれば鬼に金棒です。真穂さんもこの撮影では主演女優として、堂々と主役を演じきってくれました。

映画「ファースト・サムライ・イン・ニューヨーク」の撮影現場。主役の本田真穂さんに殺陣指導する筆者。
「ファースト・サムライ・イン・ニューヨーク」で、本田真穂さんは見事ショートフィルム部門のライジングスター賞(Rising Action Star Award. Female short) を受賞しました。

ニューヨークを拠点に活動している俳優は、皆、切磋琢磨しています。今日から俳優というわけにはいかないのが実情で、きちんと俳優の学校で専門知識や技術を学び、多くのメソッドをこなし、競争率の激しいオーディションに勝ち残るべく、日々自分を高めています。また、日本ではあまり聞かれませんが、ベテランになっても、プロを対象にした多様なクラスで学び続けることができるのは、アメリカの良い所だと思います。殺陣波濤流NYの道場を学びの場として切磋琢磨できるような環境作りに努め、また頑張っている俳優さんたちに刺激を受けながら、私も常に精進して参りたいと思います。

今回は本田真穂さんをご紹介いたしました。
真穂ちゃん、ありがとうございます。
そして最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございます。

殺陣波濤流NY
代表:香純 恭

2019年 8月 22日更新

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tate@hatoryuny.com

Columnist's Profile

殺陣波濤流NY代表香純 恭(殺陣波濤流NY)

1995年 - 日本の芸能事務所ホリプロ所属。

1998年 - 本格的な殺陣とアクションの技芸を学ぶため、藝道殺陣波濤流高瀬道場に入門、主宰高瀨將嗣氏に正式弟子入り。徹底的に殺陣やアクションの技芸を学ぶほか、アクティング、カメラポジション、カメラアングル、礼節から日本の歴史に至るまで、あらゆる角度から指導を受ける。アクション、スタント、また女優として多数の映像作品や舞台に出演。

2012年 - 2度目の渡米後、2014年に殺陣波濤流NY道場を設立。

2015年 - NYにて本格的に殺陣師、アクション・コーディネーターとして映画や舞台のアクションシーンに携わり、翌年、アクション映画製作プロデューサーとしてユニオン映画制作を開始。初めてのプロデュース短編映画「First Samurai in New York」がLAのアルテミス・ウーマン・イン・アクション・フィルム・フェスティバルにて、武器を使ったアクション部門の最優秀賞を受賞。アカデミー賞に続く登竜門であるNY短編国際映画祭NYプレミア、ニューヨーク・ジャパン・シネマ・フェスティバル、アクション国際映画祭プレミア等、数々の映画祭に選ばれ、アメリカ日本人女性初の殺陣師、アクション・ディレクターとして快進撃を続ける。

2018年 - NY国連本部Peace is、メトロポリタン美術館、NYPD総本部等で演武を披露。

3児の母。NYのサムライママと呼ばれ、地域やメディアの間で親しまれている。

殺陣波濤流NY

Purchase, NY
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次回のコラム

COMING SOON
  • 第5回 : NYでがんばる俳優シリーズ2 これから海外で俳優をやるために。
  • 第6回 : アメリカアクション映画業界のホント。
  • 第7回 : 外でこそ、殺陣を。日本人俳優というだけで、何でもできると思われる。
  • 第8回 : 海外での子育てと仕事。
  • 第9回 : 時代劇小説を読もう! 習慣、所作から学ぶ先人たちの生きる力と思いやり。
  • 第10回 : アメリカの俳優ユニオン。メリット、デメリット。
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  • 第12回 : 海外で殺陣を広める意味。仲間の国には銃を向けたくない。